これまでレーシングカーやスーパーカーなど、超高級車に用途が限られていた炭素繊維。だが、今後は１０００万円を切る量産車に本格的な採用が予想され、
国内の中小加工メーカーにも炭素繊維の加工事業に参画できる機会が広がりそうだ。レーシングカー分野で草分け的な中小加工会社が、チャレンヂ（埼玉県
狭山市、坂下正人社長、０４・２９００・２１１１）だ。炭素繊維強化プラスチック（ＣＦＲＰ）製のコンセプトカー「ＭＯＭＡ」の製作でも知られる。

同社創業者で前社長の中村敬佳顧問は「レーサーになりたかった」という大の車好き。１０代のころ、アルバイト先の近くにあったレーシングカー工場で「社長に
直談判して働いた」（中村顧問）ほど。２０１２年に三菱レイヨングループに入り、高級スポーツ車の用途へ提案を広げている。

現在、三菱レイヨンと共同開発したプレス成形法「ＰＣＭ工法」の普及に力を注ぐ。材料裁断、プリフォーム（中間基材）、プレスと工程数が少なく、成形作業時間
は１０分程度で済む。日産自動車の高級スポーツ車「ＮＩＳＳＡＮ　ＧＴ―Ｒ」１４年モデルでは、外板部材にＰＣＭ工法で製作したトランクリッドが初採用された。プ
レス機を用いた圧縮成形の工程で成形時間を短縮し、自動車向け部材の量産を可能にした。

現在、炭素繊維成形の主流は高温・高圧で焼き固める成形設備であるオートクレーブ成形（ＡＣ）。炭素繊維の物性を最大限引き出せるものの、６時間程度かか
るため量産に適さない。中村顧問は「ＡＣは熟練者の作業に頼る部分が大きい」とし、手作業の工程を機械化するＰＣＭ工法に期待は膨らむ。

今後、ますます自動車に適用が見込まれる炭素繊維。チャレンヂにも新たな依頼が寄せられているが、「レーシングカー向けの取り組みが、なかなかできない」
と中村顧問は苦笑する。

http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0820150604cbab.html
チャレンヂが製作したコンセプトカー「ＭＯＭＡ（モマ）」